どの職業においても人間関係の悩みはつきものですが、女性が多く、保護者や同僚、正規社員やパートなどさまざまな立場の人と関わらなくてはならない保育士は『人間関係』に悩む方が多いのではないでしょうか?
また、人間関係の悩みを気軽に相談できる相手がいない場合、自分一人で抱え込んでしまい、「保育士を辞めたい」と考えるケースもあるでしょう。
この記事では、保育士が人間関係で悩む課題と解決策やポイントをご紹介します。
あわせて、人間関係の改善が難しい場合の方法もお伝えしますので、人間関係で悩む保育士さんはぜひ参考にしてくださいね。
目次
保育士が人間関係で悩む場面とは?
一般企業に比べて、保育園の場合はクラス運営など小さな組織の中で仕事を進めていく必要があります。
そのため、保育観の違いや気が合わない人と仕事をしなくてはならない場合、毎日出勤するのが辛いと感じることもあるでしょう。
また、保育園は女性が多い職場なので派閥やグループができたり、感情のもつれが原因で人間関係のトラブルに発展することもあります。
ここでは、保育士が人間関係でよく悩む場面をご紹介します。
新人保育士の場合
保育士に限らず、社会人一年目の場合は初めての経験も多く、悩むことも多くあるでしょう。
入社してすぐの新人保育士はどんな人間関係の悩みを抱えやすいかご紹介します。
先輩保育士との人間関係
新人保育士の人間関係のトラブルとして、先輩保育士との関係性が挙げられます。
保育士は入社してすぐに担任を任されることがほとんど。
新人とは言えど、日々の忙しい保育の中で、子どもの安全に配慮しながら、一つ一つの細かな仕事を覚えていかなくてはなりません。
自分のことで精一杯になり、全体を把握して行動するのも難しいため、同じミスをすることもあるでしょう。
そんな中で、そつなく仕事をこなす先輩保育士を見ては、
保育士
とさらに落ち込んでしまいます。
また、先輩保育士に分からないことを聞くにも、足を引っ張っているようで申し訳ないと感じ、気軽に聞けない。
そんな状況でミスをするたびにますますコミュニケーションがとれなくなり、先輩保育士との関係性が悪化していくケースが多いのではないでしょうか。
保護者との人間関係
新人保育士は保護者との人間関係に悩むことも多いでしょう。
新人保育士の場合、保護者は自分より年上の場合が多く、それだけで保護者対応のハードルが高くなってしまい、コミュニケーションのとり方に悩んでしまいます。
また、保育士として経験が少ないという理由から信頼してもらうまでに時間がかかることも。
そんな状況の中で保護者からクレームが発生すると、ますますどうしたら良いか分からず、大きなトラブルに発展したり、関係性が悪くなることもあります。
さらに、新人保育士は誰に相談したら良いか分からず、一人で抱え込んでしまいがちです。
せっかく憧れを持って保育士になっても、人間関係の理想と現実のギャップに耐えられず、年度途中で辞めてしまう新人保育士が多くいます。
同僚保育士との場合
クラス担任の場合は、同僚保育士で意見がぶつかることがあります。
保育士は一般企業と比べて役職の数が少ないため、基本的には同じ階級のもと働いています。
保育園はクラスも複数で担任を持つ場合が多く、慣れるまでは経歴の長い先輩保育士と組む場合がほとんです。
新人保育士同様、忙しい保育の中で先輩保育士とコミュニケーションが取りづらいことで悩むケースが多くあります。
また、子どもの安全を守るためにピリピリとした雰囲気の中で、言葉足らずの一言が原因で関係が気まずくなってしまったり、保育観の違いでぶつかるケースもあるでしょう。
さらに、クラス担任の場合は、毎日顔を合わせることになるため、一度人間関係がギクシャクしてしまうと出勤するのが億劫になってしまいます。
園長や主任との場合
立場が違う園長や主任との人間関係に悩む保育士は多いでしょう。
園長や主任など園の責任者の立場は、園を運営する立場で物事を見ているため、現場の保育士と考え方の違いでぶつかったり、細かな指導を受けて辛さを感じる保育士もいるでしょう。
また、園長や主任と保育方針や考え方が合わなくても、保育士の立場からはなかなか意見が言えずコミュニケーションが満足にとれず、結果的に不満につながることもあるでしょう。
さらに、日本特有の年功序列の考えから、管理職=権力と勘違いをし、高圧的な態度で保育士と接したり、現場の意見は聞き入れなかったり、そんな管理者も中にはいるかもしれません。
そのような考え方や立場の違いが原因で、人間関係に悩む保育士も多いでしょう。
保護者との場合
保護者と良好な人間関係を築くのが難しいと悩みを抱える保育士もいます。
基本的に保育士の仕事は働く保護者の代わりに保育をすること。
さまざまな性格や価値観の人がいるように、子育てに関する考え方や方針もそれぞれの家庭によって異なります。
時には、「もっとうちの子を見て欲しい」「運動会や発表会ではうちの子を目立つポジションにして欲しい」など難しい問題を言ってくる保護者もいるでしょう。
そのような保護者からのお願いにストレスを感じたり、「クレームを避けたい」「良好な関係を築きたい」と考えるがゆえに伝えるべきこともハッキリ伝えられなかったり。
「保護者一人ひとりと良い信頼関係を築かなくては」と意識しすぎるあまり、それが精神的な負担になるケースもあります。
パート保育士の場合
正規社員とコミュニケーションがとれず、人間関係に悩むパート保育士もいるでしょう。
保育士の中には、正規職員ではなくパートタイマーで働く職員もいます。
パート保育士の中には、小さなお子さんがいて熱を出した時は早退しなくてはならないということもあり、正規職員へ気を遣ってしまうこともあるでしょう。
また、基本的にパート保育士は、全クラスのサポートに入ることや、勤務時間が短かく会議に参加できないこともあるため、正規職員とコミュニケーションが上手くとれないことも多く、そのことで業務に支障が出る場合もあります。
立場的なものから気を遣ってしまい、保育に関する意見が言えないために、正規社員との人間関係に悩むパート保育士は多いでしょう。
保育士が人間関係で悩む課題と対処法
ここまで人間関係に悩む場面について紹介してきましたが、次にその課題と対処法をご紹介します。
人間関係の課題が改善されないと、「退職したい」「転職したい」と思うこともあるでしょう。
また、人間関係で悩む方の多くは、「対処法が分からない」という方が多いのではないでしょうか?
ここからは、保育士が人間関係で悩む課題別に対処法をご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。
コミュニケーションが取れない
相手が上司や先輩保育士の場合は尚更、どのようにコミュニケーションをとれば良いか分からないということがあると思います。
しかし、コミュニケーションを取れない・取るのが苦手という方の中には、以下のように、コミュニケーションをとることにそもそも苦手意識がある場合も考えられます。
- 過去にコミュニケーションで失敗をして恥をかいたトラウマがあるから不安
- 間違って変なことを言って相手が傷ついたらどうしよう
- 思っていた反応と違う反応が返ってきたらどうしよう
コミュニケーションが上手な人の特徴やポイント
コミュニケーションが上手な人の特徴は相手の話をしっかり聞いて受け止められること。
会話の中で「それは違う」と思ったとしても、否定するのではなく、まずは相手の話を聞きまっすぐ受け止めることができると、自分の意見も伝えやすかったり、コミュニケーションがスムーズにとれるようになります。
しかし、全てに対し「私も分かるよ」と同意をしていては、気持ちが滅入ってしまうため、同意でもなく否定でもなく、相手が感じている気持ちに対してそのまま「大変だったんだね」と受け止めるのがポイント!
この方法は保護者・同僚・先輩保育士・主任や園長など立場が異なっても使える方法です。
こまめなコミュニケーションの積み重ねが信頼を作る!
人間関係においてコミュニケーション不足は誤解を生んだり、悪い方向に進みがちです。
保育の中でこまめにコミュニケーションをとり、お互いの状況が分かると解決方法が生まれたり、認識のズレはなくなるでしょう。
また、分からない事や方向性のズレを感じた時はそのままにせず、その都度お互いに話してコミュニケーションをとるのがベスト。
その際は相手の話や意見もしっかり聞き受け止めつつ、「こんな方法はどうですか?」と自分の意見も伝えてみましょう。
誰に相談したら良いか分からない
特に、新人保育士の悩みとして誰に相談すれば良いか分からないことが挙げられます。
また、中には、以下のような理由で相談しづらい人もいます。
- 「こんなこと相談するの何だか相手に申し訳ない」と考えてしまう
- 「もしかしたら私に非があるかもしれないから」と考えてしまう
なぜなら、一人で殻に閉じこもった状態でいくら考えても、物事をマイナスに捉えてしまったり、事実として起きてもいない不安を考えては、また不安になったりと悪循環になりがちだから。
全ての人がそうとは言い切れませんが、人間は一度マイナスに考えると、マイナスな面ばかりが目に付くものです。
相談することが解決につながることも!
人間関係に悩んだ時は、まず身近な人に相談しましょう。
保育園の同僚や先輩保育士でも良いですし、家族や学生時代の友人など、あなたにとって話しやすい相手に相談するのがベストです!
声に出して悩みを誰かに伝えることで気持ちがスッキリするかもしれません。
また、第三者の意見を聞くことで自分では気付けなかったことに気付けることもあります。
話す前は難しく考えていたことも、人に話していくうちに「あれ?なんで悩んでいたんだろう」と気持ちが軽くなることもあるでしょう。
それでも改善しない場合は、園長や主任などに相談することも一つです。
園長や主任は保育園を運営する立場なので、相談することで良い方向になるよう環境を変えてくれたり、全体を見ている視点で良いアドバイスをしてくれるかもしれません。
保育に関する価値観が異なる
一人ひとりさまざまな性格の人がいるように、保育士も保育に関する価値観が異なります。
しかし、ここで大事なのは、さまざまな保育観があることは決して悪い事ではないということ。
さまざまな保育観があるということはそれだけ幅広い視点で保育ができるということであり、子どもにとっても偏りのない保育が提供できます。
とは言っても、チームで保育をする以上、ある程度の保育方針や考え方の方向性を揃えておくことはとても大切なことです。
意見交換が良い保育環境を作る!
そのため、会議や園内研修で事例研究をしたり、保育士同士で振り返りをしたり意見交換をする機会を設ける必要があります。
ポイントとしては、保育士同士で保育観が異なった場合は、相手に苦手意識を持ってシャットアウトするのではなく、前向きに意見を交換する場を作りましょう。
その際、先輩保育士に対してなど言いづらい場合は、以下のように話の中心を『子どもベース』にすることで上手く伝えることができます。
- 子どもたちにとってどうしたら良いか
- 子どもたちのためには何ができるか
現役保育士のエピソード集~意識したら人間関係が改善されたケース~
ここでは実際に、現役保育士が体験した人間関係に関するエピソードを紹介します。
是非参考にしてくださいね。
組んでいる先輩保育士とこまめに話すようにした。
入社した1年目。
保育経験が豊富な6年目の先輩保育士と1歳児クラスを担任した時の話です。
その時、私は目の前の仕事をこなすことに精一杯でした。
何度も何度もミスを重ねてしまい、「先輩はできるのになんで私はできないんだろう」と自己嫌悪に陥ることも多々ありました。
また、子どもたちも転倒や噛みつきが多い1歳児期。
子どもたちの安全を守るために、時にはピリピリした雰囲気になることもありました。
さらに、なかなか自分から積極的にコミュニケーションがとれず、先輩保育士がピリピリしているのは、「私ができないからだ」と勝手に悪い方向に考えてしまっていました。
それを同僚に相談したところ、「ちょっとしたことでも自分から聞いてみたらどうかな?」とのこと。
戸惑いもありましたが、意識して自分から積極的に先輩保育士に聞いたり相談したりするようになりました。
その結果、以前よりも少しずつコミュニケーションをとれるようになり、気まずさはなくなったのはもちろん、私自身のミスも減り、保育が楽しいと感じられるようになったのです。
私はそれ以来、人間関係で悩むことがあっても、自分の殻に閉じこもるのではなくその都度誰かに相談したり、積極的にコミュニケーションをとったりすることで、人間関係の問題が解決できるようになりました。
考え方の軸を子どもベースにしてみた
保育士3年目。一緒に組んだ同僚保育士とのエピソードです。
保育士は大切な子どもの命をお預かりする責任ある仕事。
しかし、一対一で見ている訳ではないので、時には怪我につながったり、事故につながりそうな場面も沢山あります。
そんなピリピリした状況の中、同僚保育士は余裕の無さからか、子どもたちに対しても口調が強くなることが増えました。
私もその都度「厳しすぎない?」と伝えるも、お互い上手く意見交換ができず、関係性もギクシャク。
その状況を先輩保育士に相談したところ、「でもそれって2人とも子どものことを思っての行動だよね?」と言われてハッとしました。
なぜなら、
同僚保育士は『子どもの安全を守るために』私は『子どもたちが楽しく過ごせるように』と考えていることに気付いたからです。
それをきっかけに、同僚保育士とは『子どもたちにとってどうすべきか』という視点で話し合いと改善ができるようになり、関係も良好になりました。
保護者の方と丁寧にコミュニケーションをとるよう意識した
『保育士は保護者対応が大変!』というのは入社前からなんとなくイメージがありましたが、保育士1年目の私にとって保護者対応は想像を超えるほど大変なものでした。
さまざまな考えの保護者がいて、中には、「もっとうちの子を見て欲しい」と言われることも多く、苦手な保護者とはできれば関わりたくないとまで思うように。
そのことを園長先生に素直に伝えたところ、「そりゃ、保護者は我が子が心配だからそう言うこともあるよ」と一言。
その一言で、確かに言われてみれば、今まで保護者が安心できるようなコミュニケーションの取り方ができていなかったということに気付いたのです。
それをきっかけに、保護者に対してどんな小さなことでも成長を伝えたり、家庭での状況を聞いたりこまめに丁寧にコミュニケーションをとるよう心掛けました。
その結果、以前のような要求やクレームは自然となくなり、保護者とも良い信頼関係を築くことができ、保護者対応のカギは『こまめなコミュニケーション』だと学びにつながったのです。
人間関係が改善されない状況なら環境を変えてみよう!
子どもと関わることが好きで、いざ保育士になったのに、職場の人間関係に悩んでしまい、「辞めたい」「転職したい」と考えるケースは多いのではないでしょうか。
せっかく縁があって入社した保育園。退職ではなく解決できればベストです。
しかし、コミュニケーションや話し合いをしても人間関係が改善されない場合もあります。
最悪の場合はいじめや無視など、コミュニケーションをとる以前の状況になっていることも。
そんな状況の場合は、無理せず自分の気持ちを第一優先にどうするか・どうしたいかを考えましょう。
場合によっては、同じ法人や企業の系列園に異動することも方法の一つです。
また、心機一転、他の保育園へ転職するのも選択肢としてあります。
環境を変えることで改善される場合も多いので、あまり重く考えすぎずに、自分にとって最善の方法を選びましょう!
心機一転、環境を変えてみるのも方法の一つ!