待機児童の増加や保育士不足が社会的な課題となっている今、「保育補助」の仕事が注目されています。
保育士資格がなくても、子どもと関わる仕事がしたいと考える人にとって、保育補助は魅力的な選択肢です。
今回は、無資格で保育補助になるために必要なステップや、働く際に知っておくべきポイントを詳しく解説します。
子どもと触れ合いながら、支援の役割を担いたい方にとって、役立つ情報をお届けします。
目次
保育補助の役割とは?
保育補助の主な役割は、保育士が忙しい中で手が回らない業務をサポートすることです。
具体的には、0歳児から就学前の子どもたちを対象に、以下のような業務を保育士の補助としてこなしていきます。
- 食事やトイレの補助
- お昼寝の際の見守り
- おもちゃの準備・片付け
- 消毒作業など
これらの業務は、子どもたちが安全に過ごすために欠かせない重要な仕事です。
保育士の補助として働くため、特別な資格や経験は求められませんが、保育士と同様に、子どもへの責任を持つ仕事であるという心構えが重要です。
保育補助には、体力が求められる場面が多く、日々の仕事において自分の健康管理ができることが大切です。
また、保護者の目線では、保育士も保育補助も同じように子どもを預ける人間として信頼されるため、資格の有無にかかわらず、責任感を持って仕事に取り組む姿勢が求められます。
保育士
加えて、子育て経験があると、より実践的なサポートができることが多いです。
子どもの成長を支える仕事が好きな方には、保育補助の仕事は非常にやりがいがあり、適職となるでしょう。
保育の仕事で保育補助が求められている理由
近年、夫婦共働き世帯の増加や少子化の影響で、保育ニーズがますます多様化しています。
これにより、保育士の需要が急増する一方で、保育士不足が深刻化しています。
特に、待機児童の問題を解消するために新設された保育施設では、資格を持つ保育士だけでは十分な人手を確保することが難しくなっています。
このため、多くの保育園では、保育士のサポートを担う保育補助者の採用が進んでいます。
さらに、政府は2016年から「保育補助者雇用強化事業」を開始し、保育士の負担軽減や離職防止を目的として、無資格の保育補助者を雇う費用を支援しています。
この支援策によって、より多くの保育施設が保育補助を採用するようになり、その需要は高まる一方です。
保育補助者は、保育士の負担を軽減し、子どもたちに対してより良い環境を提供する役割を果たしています。
今後も保育補助の需要は続くと予想され、保育業界において非常に重要な役割を果たすことが期待されています。
保育補助としての働き方
保育補助は、主に保育士の手が回らない業務をサポートする役割を担っています。
保育補助として働くことは、保育業界に関心がある方にとって、大きな経験値を積むチャンスにもなります。
ここからは、保育補助の給料形態や求人情報・状況について紹介します。
保育補助の雇用形態
保育補助の求人は、パートタイムの雇用形態が圧倒的に多いのが特徴です。
前述したように、保育補助の主な役割は、保育士が他の業務に忙しくて手が回らないときのサポートを行うことです。
そのため、正職員よりもパートとして働くケースが多く、求人の雇用形態別の割合では、約8割がパート・アルバイト、正職員と契約職員はそれぞれ約1割となっています。
保育補助の勤務形態
非常勤だからこそ柔軟なはたらき方ができる
パート勤務といっても勤務時間や日数は園によって異なりますが、柔軟な働き方は可能です。
- フルタイム勤務を希望する方は週休2日・8時間勤務のフルタイムパートとして働く
- フルタイム勤務は厳しいという方は、午前のみや午後のみの短時間だけ働く
これにより、家庭の都合や学業との両立を希望する方にとって、働きやすい環境が整っています。
また、無資格でも子育て経験を活かしたい方や、学生で学業の合間に保育の仕事を学びたい方にも適した職場が多いため、パートタイムの保育補助として働くことは、非常に選択肢が広い働き方と言えます。
自分のライフスタイルに合わせた働き方ができるので、保育補助の仕事は多くの人にとって魅力的な職業となっています。
保育補助の給料事情
保育補助の給料は、雇用形態や勤務地、経験に応じて異なります。
前述したように、保育補助の求人情報の多くは、パートやアルバイトとして働く場合が多く、その場合は時給制で支払われます。
全国平均の時給は約1,236円ですが、都心部では高く、地方では低くなる傾向があります。
保育補助の求職エリア | 時給 |
---|---|
都心部 | 約1,300円前後 |
地方 | 約1,000円前後 |
また、厚生労働省の2019年調査による「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果」では、以下の通りです。
勤務形態 | 公立保育所の給料 | 私立保育所の給料 |
---|---|---|
常勤勤務の保育補助 | 148,720円 | 223,584円 |
非常勤勤務の保育補助 | 149,238円 | 168,561円 |
さらに、常勤の保育補助の場合、令和4年度の賃金構造基本統計調査によると、月給は28万200円が相場で、事業規模により給与水準に違いがあります。
従業員が少ない事業所では給与が高く、大規模な事業所では給与がやや低くなる傾向が見られます。
賞与については、保育補助(その他サービス職業従事者)の平均賞与額は45万6,500円となっており、勤務先や雇用形態によっては賞与が支給されない場合もあります。
保育補助の給料は、勤務する施設の規模や地域によって変動するため、応募時に具体的な条件を確認しましょう。
保育補助と保育関連の職種との違い
保育補助は、他の保育関連職種と比較すると、資格や役割において大きな違いがあります。
特に保育士や家庭的保育補助者との違いは、必要な資格や担当する業務範囲において明確に異なります。
ここでは、保育補助と保育関連の職種との違いを業務や役回りの観点から解説します。
保育士との違い
保育士と保育補助の最大の違いは、資格の有無にあります。
例えば、保育士になるには、以下の過程を経る必要があります。
- 保育士養成校を卒業
- 国家試験に合格する
保育士は、児童福祉に関する深い知識を持ち、子どもの発達に沿った保育計画を立てることが求められます。
加えて、保育士は保護者との連絡帳作成や、保育目標の設定、クラス担任や主任といった責任ある役職も担当します。
一方、保育補助は無資格で働けることが特徴で、保育士のサポートを担当します。
主に、食事やお昼寝の見守り、トイレの補助、遊びの準備・片付けなど、子どもとの直接的な関わりが中心で、専門的な保育計画の立案や報告書の作成はありません。
このように、保育士は専門的な知識を活かし、保育全体を管理する役割を果たすのに対し、保育補助はサポート業務に特化しています。
家庭的保育補助者との違い
家庭的保育補助者と保育補助者も似た役割を担っていますが、その勤務先や必要な資格に違いがあります。
家庭的保育補助者は、小規模保育事業所や家庭的保育事業所で働く職種で、少人数の子どもたちと親密な関わりが求められる環境です。
家庭的保育補助者になるためには、市町村の研修を修了する必要があります。
家庭的保育は、家庭的な環境で行われるため、柔軟で個別的な対応が求められます。
一方、保育補助者は、無資格で始められるため、認可保育所や認可外保育施設など、さまざまな施設で働けます。
保育補助者は、資格や経験に関わらず多様な施設で働ける点が特徴で、保育業界に足を踏み入れるための入り口として有用です。
また、家庭的保育補助者は、資格を持っていなくても短期間で働き始めることができる保育補助者と比べて、研修を受ける必要がある点で異なります。
保育補助からスキルアップが狙える「子育て支援員研修制度」
保育補助として働き始めた方が、さらなるスキルアップを目指す際に役立つのが「子育て支援員研修制度」です。
この制度は、無資格でも保育に関する知識や技術を身に付けられる全国共通の研修で、2015年に政府によって導入されました。
研修を修了すると「子育て支援員」として認定され、保育や子育て支援の現場で役立つスキルを証明する資格を得られます。
この認定は全国共通で、研修を受けた地域以外でも活用可能です。
保育補助だけでなく、より専門性の高い業務に挑戦したい方にとって、スキルアップのための重要なステップとなります。
基本研修
子育て支援員研修の「基本研修」では、保育の基本的な知識を習得します。
この研修は、すべての受講者が履修する必須科目で、子育て家庭の現状や子どもの発達、障がいについて学ぶ内容が含まれます。
加えて、研修内容をグループで討議し、実践を振り返る総合演習も実施され、理論と実践の両方からスキルを習得します。
基本研修は9時間で構成されており、保育の基礎を身につけたい人にとって重要な第一歩となります。
専門研修
専門研修は、特定の分野で働くために必要な知識やスキルを学ぶコースです。
受講者が目指す職種に応じてコースを選択でき、希望する分野に特化した実践的な内容が含まれます。
この研修を受けることで、専門性を高め、より高度な役割を担うための準備が整います。
地域保育コース
地域保育コースは、小規模保育や家庭的保育、事業所内保育、一時預かり保育に従事する方向けの研修です。
少人数の子どもと密接に関わる保育現場で活躍するために必要な知識や技術を学べます。
このコースは、小規模な環境で働きたい方や個別対応を重視する保育を希望する方に適しています。
地域子育て支援コース
地域子育て支援コースでは、地域子育て支援拠点や子ども家庭支援センターで働くためのスキルを学びます。
子育て中の親子を支援し、育児相談や情報提供を行う役割が求められる現場での実践的なスキルを習得します。
地域の親子をサポートしたい方にとって、非常に有用な研修です。
放課後児童コース
放課後児童コースは、学童クラブや放課後児童支援の現場で働くための研修です。
保護者が日中不在となる家庭の子どもたちに、安全で適切な生活や遊びの場を提供するスキルを学びます。
このコースは、子どもたちの放課後の成長をサポートしたい方に適しています。
社会的養護コース
社会的養護コースでは、児童養護施設や社会的養護を必要とする家庭の支援者として働くためのスキルを習得します。
困難な状況にある子どもたちへの支援方法を学び、専門性を高める研修です。
このコースは、児童福祉の現場で活躍したい方にとって重要な学びとなります。
保育補助は無資格でも保育関連の仕事ができる
保育補助は、保育士の資格がなくても子どもたちと関わる仕事ができる職種です。
特に「子どもが好き」「子育ての経験を活かしたい」という方には最適な働き方の一つです。
主な役割は保育士のサポートであり、子どもたちの食事やお昼寝の補助、おもちゃの準備や片付けといった日常的な保育業務を担当します。
また、施設によっては行事の準備や環境整備なども任されます。
保育補助の仕事は、施設の方針や状況に応じて内容が異なるため、事前に求人情報をよく確認することが重要です。
「想像していた仕事と違う」といったミスマッチを防ぐため、自分の希望や条件をしっかり整理し、それに合った職場を選ぶことが大切です。
現在、保育士不足が社会問題となる中で保育補助の需要が高まっています。
多くの施設では、子育て中の主婦や保育士資格を持つブランクのある方、将来保育士を目指す学生など、さまざまな背景を持つ人を積極的に受け入れています。
また、パートやアルバイトで働ける職場も多いため、勤務時間や働き方に制約がある人でも比較的柔軟に仕事を始められる点が魅力です。