「児童票」は子どもの成長過程や園での姿を記録する大切な書類です。
特に「個人経過記録」という項目は、子どもの姿をよく観察して丁寧に記録をとっていく必要があります。
初めて児童票を書く方の中には「どうやって書けば良いかわからない」「子どもの姿をうまく捉えられない」と悩んでしまう方も多いでしょう。
この記事では、児童票についてや児童票の個人経過記録の書き方のポイントについて紹介します。
年齢別の例文も紹介するので、ぜひ児童票作成の参考にしてみてください。
児童票とは
児童票とは、保育園で用いられる子どもに関する様々な情報を管理するための書類です。
子どもの基本的な情報から、園での生活の様子、発達状況などを年度の担任が記録していきます。
進級時の引き継ぎ資料や就学前の要録を作成するときの参考資料として使用されます。
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児童票の様式・項目
児童票の様式は公に定められたものがないので、保育園や自治体ごとに異なります。
記入項目も園ごとに違いはありますが、基本的には以下のようなものです。
- 園児の氏名、住所、生年月日
- 保護者の情報
- 緊急連絡先
- 持病やアレルギーの有無
- 健康診断や身体計測の記録
- 個人経過記録(発達状況や生活の様子など)
それぞれ項目に沿って記入していきますが、最後の「個人経過記録」に関しては保育士が見取った子どもの姿を文章にまとめて記入する必要があります。
「個人経過記録」についてもう少し詳しく紹介します。
個人経過記録とは
児童票の個人経過記録とは、子どもの園での生活や遊びの様子、友達関係、発達状況などを記録する項目です。
子どもの姿を文章でまとめないといけないので難しく感じてしまいますが、児童票の中でも保育の質の向上に関わってくる重要な項目です。
個人経過記録の書き方は園によって様々で、全て文章で書く場合や、発達状況に関するチェックシートを用いて記入していく場合などがあります。
記入欄が五領域それぞれの項目に分かれていて、領域に照らし合わせて子どもの様子を書いていく方式もあるでしょう。
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期が終わるごとに効率的に書いて終わらせていきましょう。
個人経過記録を書くポイント
個人経過記録は、児童票の中でも最も記入に悩む項目です。
特に新人保育士の場合「うまく文章にまとめられない」「表現や言い回しが思いつかない」と悩み、記入に時間がかかってしまう方も多いでしょう。
ここでは児童票の個人経過記録を記入する際のポイントについて紹介します。
普段からこまめにメモをとる
個人経過記録を書くときに参考にできるよう、普段からメモをとる習慣をつけておくことをおすすめします。
頭で覚えていられると思っていても毎日複数の子どもと1日中接していると次々と頭の中の情報が更新されていき、どうしても忘れていってしまうものです。
日々の保育の中での子どもの様子や発言で何か気づきがあったときにこまめにメモを取ることで、後で見返したときに具体的な子どもの姿が浮かび上がってくるでしょう。
給食時間やお昼寝中など、日中の子どもの姿を思い返してメモを取る時間を決めておいて習慣化させるのも良いですね。
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主観は入れず、具体的なエピソードを書く
個人経過記録は進級時の引継ぎに使用される書類なので、誰が読んでも子どもの様子がイメージできるような具体的なエピソードを選んで書きましょう。
例えば「お散歩が好きだった」だけでなく「お散歩に行くよ、と保育士が声をかけると自分で帽子や靴下を持って来て園庭へ出る準備をしようとしていた」など、子どもの実際の動きや様子を捉えて書くと良いでしょう。
また個人経過記録は子どもの成長の記録なので事実を中心に書くようにし、なるべく保育士の主観による解釈や推測は入れない方が良いでしょう。
「健康、人間関係、環境、言葉、表現」の五領域を意識
保育所保育指針では五領域に基づいた保育を行うことが大切だとされています。
そのため、五領域を意識しながら子どもの発達を捉えることでポイントを押さえた個人経過記録を書くことができます。
園によっては元から五領域それぞれに対応した子どもの姿を書くと決まっている場合もあるかもしれませんが、そのような決まりがない場合でも書く内容に迷ったら五領域の視点から考えてみましょう。
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先輩保育士の書き方を参考に
児童票の書き方やルールは園によって様々なので、初めて書く方は先輩保育士の書き方を参考にすることをおすすめします。
参考にする際は以下のような点を確認すると良いでしょう。
- 箇条書きがOKかどうか
- 文末はです・ます調かである調か
- 文章量はどのくらいか
過去の児童票を見せてもらうなどして書き方や雰囲気を把握しておきましょう。
誤字脱字に注意
児童票を書き上げた後は園長や主任保育士に提出しますが、提出前には誤字脱字がないか入念にチェックしておきましょう。
園によっては修正ペンの使用が禁止されている場合があるので、鉛筆で下書きをして間違いがないかチェックしたあとに黒ペンで清書することをおすすめします。
目で見るだけではわかりにくいので文章を音読してみることで間違いに気づきやすくなります。
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年齢別!個人経過記録の例文
個人経過記録を書く時のポイントについて紹介してきました。
子どもの発達の捉え方や見取り方は、対象とする子どもの年齢によっても大きく変わってきます。
ここでは未満児クラスの0〜2歳児と幼児クラスの3〜5歳児に分けて、個人経過記録の書き方を紹介します。
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0~2歳児の記入ポイント
0〜2歳児は成長が著しい時期で、子ども一人ひとりの個人差が大きい時期でもあります。
この年齢は食事、睡眠、排泄などの養護の面を中心に見ながら一人ひとりの成長を捉えていくことが大切です。
0歳児は保育士と信頼関係を築いて情緒の安定した生活を送れているか、1歳児は自我が芽生えて行動範囲が広まっていく中での成長の様子に注目しましょう。
2歳児は身の回りのことをどのくらい自分でできるようになったか、友達や遊びなど周囲への関心の広がりについて着目すると良いでしょう。
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0歳児
0歳児クラスの個人経過記録で参考にできる例文を紹介します。
・指先で小さな物をつまめるようになり、小さくちぎったパンやボーロなどを親指と人差し指でつまみながら食べていた。
・音の鳴る玩具に興味を示し、保育士が鳴らして見せると声を出して笑っていた。
1歳児
1歳児クラスの個人経過記録で参考にできる例文を紹介します。
・おむつが汚れると、指さしをしながら「ちっち」と言って保育士に教えてくれていた。
・絵本を見ながら、出てくる動物の動きの真似をして遊ぶことを喜んでいた。
2歳児
2歳児クラスの個人経過記録で参考にできる例文を紹介します。
・お昼寝前後の着替えを自分でしようと意欲を見せている。上手くできないときは保育士に「できない」と助けを求めていた。
・自由遊びの時間にはお絵描きをよくしており、「これがママ!」と描いたものを保育士に話していた。
3~5歳児の記入ポイント
3〜5歳児はある程度身の回りのことが自分でできるようになり、友達の関わりが増えて遊びも活発になってきます。
この年齢は友達との関わり方や好きな遊び、興味関心など子どもの姿を多角的に捉えて書くことが大切です。
3歳児や4歳児は友達と一緒に遊びたいけれど、上手くいかなかったり喧嘩になってしまったりと葛藤のある時期です。
遊びや友達との関わりの中での表情や言葉に注目して、子どもの姿を捉えていきましょう。
5歳児は友達と協力し合って遊びを進めたり何かを達成したりすることに喜びを感じられるようになるので、そのような姿に着目してみると良いでしょう。
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保育所児童保育要録の書き方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
保育所児童保育要録の書き方を徹底解説!例文や記入のポイントも紹介します3歳児
3歳児クラスの個人経過記録で参考にできる例文を紹介します。
・粘土遊びでは平たい丸型を重ねてハンバーガーを作っていた。「いらっしゃいませー!ハンバーガー屋さんですよー!」と周囲の友達に声をかけていた。
・使いたい玩具を友達が先に使っていたようで、じっと眺めていた。保育士が声をかけることで自分の口で友達に「貸して」と伝えることができた。
4歳児
4歳児クラスの個人経過記録で参考にできる例文を紹介します。
・自由遊びの時間に2チームに分かれてサッカーをしていたが、自分のチームが負けそうになると「もうやめる」と言って遊びから抜け出していた。
・クラスの友達が玩具の取り合いでトラブルになっている場面を見つけ「じゃんけんで決めたら?」と解決方法を提案していた。
5歳児
5歳児クラスの個人経過記録で参考にできる例文を紹介します。
・ドッジボールをするときに人数を数えていた。奇数だったので「誰かドッジしないー?」と周りにいる友達に声をかけて遊びに誘っていた。
・「サラサラの砂をつけるといいんだよ」と友達と話し合いながら泥団子づくりに熱中していた。作った団子はカップに入れて靴箱にしまい、さらにピカピカになるよう次の日も一生懸命磨いていた。
丁寧かつ手際よく、児童票を書き上げよう!
児童票は子どもの成長過程や園での姿を記録する大切な書類です。
丁寧に記録を取ることで、進級時の引き継ぎ資料としてだけでなく保育の質の向上にも役立てることができます。
児童票の書き方のルールは園によって異なるので、勤務する園の書き方は必ず確認しておきましょう。
今回紹介したポイントや例文を参考に、丁寧かつ手際よく児童票を作成してくださいね。