障がいのある子どもの支援を行う保育士は「加配保育士」と呼ばれています。
障がい児保育を行っている園は年々増加しており、加配保育士は子どもたちが充実した集団生活を送るために欠かせない存在です。
保育士を目指している方の中には障がい児保育や加配保育士という働き方に興味があっても、具体的な仕事内容は知らない方も多いかもしれません。
この記事では加配保育士の役割や仕事内容、補助金など国の制度、加配保育士になる方法などを詳しく解説します。
加配保育士とは
加配保育士とは、障がいの診断を受けた子どもの支援を行う保育士です。
障がい児保育のニーズは年々増えており、令和2年度時点で障がい児保育を実施している園は令和2年度で19,965か所にも上ります。
障がい児保育を行っている保育園には国からの補助があり、加配保育士を雇用することで障がいのある子どもへ手厚いサポートを行えるようになっています。
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加配保育士の役割
加配保育士の役割は障がいのある子どもに寄り添い、充実した園生活を行えるようサポートすることです。
障がいの種類や程度にもよりますが、障がいのある子どもは生活面で不便なことを抱えていたり友達とのコミュニケーションでトラブルを起こしやすかったりする場合があります。
そのため集団生活をスムーズに行えるようには、それぞれの子どもに合ったきめ細やかな支援が必要なのです。
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キャリアアップ研修にも「障がい児保育」の項目が
障がい児保育のニーズが高まると同時に、保育現場では障害のある子どもに対する支援の一層の充実が求められています。
障がい児保育に対する知識を深めるため、国による保育士等キャリアアップ研修の分野にも「障害児保育」が盛り込まれています。
加配保育士はもちろん、通常の担任を受け持つ保育士であっても障がい児保育に対する知識やスキルは今後ますます重要になってくるでしょう。
どこまでする?加配保育士の仕事内容
障がいを抱えた子どもの園生活を支援する加配保育士のニーズは今後ますます高まっていくと考えられます。
では障がいのある子どもの支援とは具体的にどんなことをするのでしょうか。
ここでは加配保育士の仕事内容について紹介します。
生活や身の回りのことに関する支援
手足が不自由であるなど身体的な障がいを抱えた子どもには生活面での支援が必要です。
食事や着替えのサポートをしたり、遠足などでの移動はベビーカーを使用したりと子どもの様子に合わせて負担のないようにサポートします。
障がいの種類や特徴によっては、集団への声掛けに反応することや次の活動への切り替えが難しい場合もあります。
加配保育士は子どもに寄り添って個別に声掛けをしたり、子どものペースに合わせて動くことで無理なく園生活を行えるよう支援します。
コミュニケーションの援助
障がいによっては友達とのコミュニケーションが難しくトラブルに発展しやすい場合もあります。
障がいを持つ子どもがいじめの対象になったり、反対に他の子どもへ危害を加えたりすることのないよう加配保育士は子どもの様子に合わせた援助や環境作りを行います。
友達にうまく自分の思いを伝えられない場合は保育士が気持ちを代弁したりコミュニケーション橋渡しをするなど状況に応じてサポートしましょう。
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個別カリキュラムの作成
保育園ではクラスごとに年間計画や月案などのカリキュラムを担任保育士が作成しますが、障がいを持つ子どもにはクラス全体のカリキュラム通り生活することは難しい場合もあるでしょう。
そこで加配保育士は担当する子どもの個別のカリキュラムを作成します。
カリキュラムを作成する際は年齢や周りの子どもに合わせるのではなく、担当の子ども一人一人の性格や障がいの特徴などを的確に把握した上で目標を設定することが大切です。
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行政や療育施設との連携
障がい児保育を行っている保育園では、自治体の保健センターや発達支援センターなどと連携を取っていることが多いでしょう。
定期的に巡回相談の心理士が園の子どもの様子を見に来られ、保育士や保護者と面談したりする場合もあります。
このような外部の機関との連携では、障がいのある子どもの普段の様子を把握している加配保育士が窓口になります。
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加配保育士にまつわる制度
障がい児保育を行っている保育園には加配保育士を雇うための費用が国から支援されます。
加配保育士を付ける基準や補助金についてなどの制度について紹介します。
加配保育士をつけるには
加配保育士を付けるためには医師の診断が必要です。
医師の診断を元に、保護者へ加配保育士を付けることについての同意を得ます。
保育士から見て発達が気になる子どもであっても、医師の診断がなければ加配保育士の必要性が認められないので補助は受けられせん。
加配保育士の配置基準
加配保育士の配置人数は国による明確な規定はなく、各自治体はそれぞれの状況に応じて配置を決定しています。
みずほ情報総研の調査によると、加配保育士の配置基準について「具体的な基準がない」自治体が42.5%と最も多くの割合を占めており、次いで「障害の程度を問わず基準が一律」が28%でした。
「障害の程度を問わず基準が一律」と返答した自治体では加配保育士1人に対して子ども1人が最も多く、次いで3人、2人の順でした。
加配保育士に対する補助金
加配保育士を配置するにあたって、国では2つの補助金制度があります。
1つ目は療育支援加算で、障がい児保育を行っている保育園を対象にした制度です。
主任保育士が主任業務に集中できるよう、障がい児支援を行う加配保育士を配置するために必要な経費を国が負担します。
2つ目は障害児保育加算で、小規模保育や事業所内保育など特定地域型保育事業所を対象にした制度です。
小規模の保育施設で障がい児を受け入れる場合、子ども2人につき、保育士1人を配置するためにかかる経費が補助されます。
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加配保育士になるには
加配保育士を付ける基準や補助金制度について紹介しました。
ここからは加配保育士の仕事に興味を持っている方に向けて、加配保育士になるために必要資格や求められるスキル、給料や求人事情などについて紹介します。
必要資格
加配保育士として働くために必要な資格は「保育士資格」のみです。
保育士資格を取得する際に必ず障がい児保育について学ぶので、勉強した知識を生かして加配保育士として働くことができます。
保育士資格を取得する方法は以下の通りです。
- 厚生労働省が指定する保育士養成学校を卒業する
- 保育士試験を受験する
求められるスキル
加配保育士には保育士資格以外の資格は必要ありませんが、障がい児保育といった専門的な仕事なので働く上でなるべく身に着けておきたいスキルもあります。
ここでは加配保育士に求められるスキルとして3点紹介します。
障がいに対する知識や理解
加配保育士として働くためには障がいに対する知識と理解が欠かせません。
障がいと一口に言っても自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症(ADHD)、難聴や視覚障害など様々な種類があります。
それぞれの障がいの特性について正しく理解し、どのようにサポートすれば良いのかを考えることが大切です。
そんな時には絵カードなど視覚的に訴えることのできる方法で指示を出すことで理解しやすくなることもあるでしょう。
子どもの姿を丁寧に見取ってサポートする力
同じ診断名がついていたとしても障がいの程度や特性は子どもによって異なります。
障がいについて正しい知識をつけることは基本ですが、現場では知識に頼るだけではなく、担当の子どもの姿を的確に見取って支援の方法を考えていくことが大切です。
同じ子どもに対する支援でも昨日うまくいった対応が今日は全く通用しないといったこともあるかもしれません。
一つの方法や考え方に固執せず、常に試行錯誤しながら臨機応変に対応する力が必要です。
保護者へ寄り添う姿勢
加配保育士は障がいのある子どもの支援だけでなく、保護者のケアをすることも求められます。
保護者の中には日々の育児に疲れていたり子どもの障がいについてナイーブになっている方も少なくありません。
保護者の悩みや不安に耳を傾けながら気持ちに寄り添う姿勢を示すことが大切です。
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給料事情
加配保育士の給料は一般的な保育士とほぼ同じ水準であることが多いでしょう。
地域にもよりますが、正社員の場合は月額17〜23万円程度、パートやアルバイトの場合は時給1000〜1300円程度が相場となっています。
求人はパート雇用が主流
地域にもよりますが、加配保育士の求人はパートやアルバイト、契約社員など非正規雇用での募集が主流です。
加配保育士の配置人数は毎年異なるので、有期雇用や必要な時間だけの雇用が多くなるためです。
中には正社員で加配保育士をしている方もいますが、その場合は通常の保育士として雇われた後、職場の人事の関係で今年度は加配保育士として配置されているといったパターンが多いでしょう。
また加配保育士は障がい児保育を行っている園でしか募集がないので、求人自体が少なく自力で探すには難しいかもしれません。
加配保育士として働くことを希望している方は、転職サイトなどプロのコンサルタントに相談してみることをおすすめします。
ベスト保育では非公開求人も揃えていますので、まずはお気軽にLINE相談にご登録ください。
加配保育士として働くメリット
加配保育士になる方法や給料、求人事情をを紹介してきました。
では加配保育士ならではのやりがいとは何でしょうか。
ここからは加配保育士として働くことのメリットを2点紹介します。
障がい児保育のスキルが身に付く
クラス運営やねらいに沿った遊びの設定などがメインの業務である通常の保育士とは違い、加配保育士は障がいのある子どもに寄り添った支援が主な業務です。
そのため加配保育士として働くことで実務の中で障がいの特性を学んだり、サポートや関わり方の引き出しを増やしたりと障がい児保育に特化したスキルが身に付くでしょう。
子どもとじっくりと関わることができる
通常の保育士は1人で30人近くの子どもを見ることもありますが、加配保育士は1~3人の少人数の子どもを担当します。
少人数の子どもと密なコミュニケーションを取り、毎日じっくりと関わることができることは加配保育士の仕事の魅力です。
もちろん障がいのある子どもが対象なので信頼関係を築くことに時間がかかったり困難なこともあるかもしれません。
しかし毎日寄り添うことで自分が担当の子どもの安心できる存在になれたり、できることが増えていく姿を近くで見守ることができたりと、大きなやりがいが感じられるでしょう。
加配保育士として働くデメリット
加配保育士は通常の保育士の経験では得られないスキルを得ることができたり、子どもとじっくりと向き合うことができるメリットがあることがわかりました。
しかし反対に加配保育士ならではの辛さや難しさもあります。
ここでは加配保育士として働くことのデメリットを2点紹介します。
個々の特性に合わせた対応が難しい
実際の現場で接する子どもの特性はそれぞれ異なるため、対応が難しく悩んでしまうことがあるかもしれません。
同じ障害でも子どもの性格によって特性の出方が違うことも多々あるので、障がい名だけで判断するのではなく一人一人の子どもに合わせた支援が必要になってきます。
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悩みを相談しにくく仕事が辛いと感じてしまうことも
加配保育士をしている中で、子どもへの接し方や保護者の対応で悩みを抱えることもあるかもしれません。
そんな時に気軽に相談できる同僚がいれば良いのですが、園に加配保育士が自分だけしかいない場合などは特に他の保育士に相談し辛いと感じてしまうこともあるようです。
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加配保育士は障がいのある子どもの園生活を支える存在
加配保育士の役割や仕事内容、働き方などについて紹介しました。
加配保育士は障がいを抱えた子どもが充実した園生活を過ごせるようサポートする大切な存在です。
子どもへの支援だけでなく保護者の相談を受けたり行政との窓口になったりと仕事内容は多岐にわたります。
障がいの知識や専門性が求められるなど大変なことも多いですが、子どもとじっくりと関わって成長を見守ることができることは大きなやりがいに繋がるでしょう。
障がい児保育に興味のある方は加配保育士として働くことを検討してみてはいかがでしょうか。