0歳児は心身ともに成長が著しく、食事や遊び、大人の関わり方も月齢によって大きく変化していきます。
初めて0歳児クラスの担任になった保育士の方や、育児を行うお母さんお父さんの中には「どのように接すれば良いかわからない…」と悩んでしまうこともあるでしょう。
この記事では0歳児の発達と大人の関わり方を月齢別に紹介します。
また保育園での0歳児保育の食事や遊びの内容、大切にしたいことややりがいなどについても詳しく解説します。
目次
0歳児保育と保育園
0歳児は人生で最も成長が著しい時期だと言われています。
例えば個人差はありますが、生まれてから1年間で身長は約1.5倍、体重は約3倍にもなります。
他にも運動機能や心など様々な面で大きく成長する時期なので、身近な大人の愛情ある関わりで情緒の安定を図ることが大切です。
ここで言う身近な大人とは母親だけに限らず、父親はもちろん保育園の保育士も当てはまります。
特に近年は共働き世帯が増加しており、0歳児から保育園へ通う子どもが増えています。
園にもよりますが、保育園の0歳児クラスは最短生後57日(生後2ヵ月)から預けることが可能です。
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0歳児の心と体の発達目安
0歳児の発達は1年を通して著しく、昨日できなかったことが今日はできるようになっているということも多々あります。
では0歳児はいったいどのような過程で発達していくのでしょうか。
ここでは0歳児の心と体の発達の目安を紹介します。
月齢別の発達と関わり方
保育園へ入園できる生後57日(生後2ヵ月)から2ヵ月ごとに区切り、月齢別に発達の目安と大人の関わり方を紹介していきます。
0歳児クラスを担当している保育士の方、また0歳児を育児中のお母さんお父さんはぜひ参考にしてみてください。
2~3ヵ月の発達と関わり方
生後2〜3ヵ月の発達の特徴です。
- 視力が少し成長し、近くにあるものが見えるようになる。
- 喃語の前段階、クーイングが始まる。
- 自分の手を発見し、眺めたり口に入れたりする。
新生児期を過ぎた生後2か月からは少しの時間であれば外出もできるようになります。
直射日光を避け、10分〜15分ほど外気浴をを楽しむと良い刺激になるでしょう。
視力が成長するので、おもちゃや大人の顔を近づけてみることで追視もできるようになってきます。
クーイングと呼ばれる「アー」「クー」など舌を使わず発声する言葉を話し始めるのもこの時期です。
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4~5ヵ月の発達と関わり方
生後4〜5ヵ月の発達の特徴です。
- 首が座り、うつ伏せにすると顔を上げることができる。
- あやされると声を出して笑うようになる。
- 興味のある玩具に手を伸ばしたり、つかんだりする。
生後4ヵ月を過ぎると首が座るので、うつ伏せになって遊ぶことができます。
しかしまだしばらくは安定せず、いきなりガクッと倒れてしまうことがあるので、うつ伏せで遊んでいるときは絶対に目を離さないようにしましょう。
この時期になると大人があやすと笑ってくれるようになります。
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6~7ヵ月の発達と関わり方
生後6~7ヵ月の発達の特徴です。
- 離乳食が始まる。
- 寝返りができるようになり、支えられると座ることができる。
- 信頼できる大人を見分けられるようになり、人見知りが始まることも。
- 歯が生え始める子もいる。
生後6ヵ月になるとほとんどの赤ちゃんが離乳食を開始します。
体をひねって寝返りができるようになる子が増え、大人が支えることで座って遊べるようにもなります。
寝返りを始めたころは、寝返った後に元に戻れなかったり腕が抜けなかったりして泣くことも多いので、必ず傍について見守るようにしましょう。
この時期にはいつもお世話をしてくれる人のことがわかるようになってきます。
不安な気持ちに寄り添って抱っこをしたり優しく声をかけるようにしましょう。
8~9ヵ月の発達と関わり方
生後8~9ヵ月の発達の特徴です。
- 離乳食が2回食になる。
- 一人で座れるようになり、ズリバイやハイハイで移動できるようになる。
- 好奇心が広がり、手に取ったものを何でも口に入れようとする。
- 「まんまん」「ばばば」など喃語がよく出るようになる。
8ヵ月をすぎるとズリバイやハイハイで室内を自由に動き回れるようになります。
この時期は手に取ったものの感触を確かめるために何でも口に入れてしまうので、誤飲や窒息事故には十分注意が必要です。
電池やペンなど手の届く範囲に危険なものがないか確認しておきましょう。
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10~11ヵ月の発達と関わり方
生後10~11ヵ月の発達の特徴です。
- 離乳食が3回食になる。
- つかまり立ちやつたい歩きができるようになる。
- 大人の動きを真似するようになる。
- 大人の言うことを少しずつ理解できるようになる。
10ヵ月を過ぎるとつかまり立ちをして、少しずつたい歩きをし始めます。
つたい歩きに慣れてきたら両手を繋いで一緒に歩いてみることで一人歩きへも繋がっていきます。
大人の動きをよく見ていて、バイバイ、パチパチなど動作の模倣を始めるのもこの時期です。
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0歳児クラスのねらいと保育内容
ここからは0歳児クラスの保育士の方に向けて、ねらいの立て方や保育内容について紹介します。
月齢別の発達で紹介してきたように0歳児は月齢ごとの成長が著しく、個人差も非常に大きい時期です。
そのため0歳児クラスの指導案のねらいは月齢の発達目安を参考にしながらも、一人ひとりの姿をしっかりと捉えて立てることが大切です。
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では実際に保育園の0歳児クラスではどのような保育をしていけば良いのでしょうか。
養護面と教育面、友達との関わり、保護者支援に分けて具体的に紹介します。
食事など養護面
0歳児クラスでは食事、睡眠、排泄の援助がメインと言っても過言ではないくらい大切です。
離乳食は歯の生えるペースや食べている様子をしっかり観察して、無理のないペースで段階を上げていきましょう。
低月齢の赤ちゃんの場合は3時間おきにミルクをあげたり、保護者から冷凍母乳を預かって解凍したものを飲ませることもあります。
食事面では保育士が子どもの様子を捉えて家庭や栄養士と連携をとって進めていくことがポイントです。
遊んでいる子もいるので危険のないようゲートで囲ったりして、一人ひとりの生活リズムに合わせて十分な睡眠がとれるように工夫しましょう。
遊びなど教育面
0歳児保育の遊びは一人ひとりの発達に合わせて設定し、安全に遊べるよう工夫することが大切です。
ここでは0歳児クラスで使える遊びのネタをいくつか紹介します。
室内遊びとおもちゃ
月齢の低いうちは、ベビージムやガラガラなど視覚で楽しめるものや手にとって遊べるおもちゃを用意しましょう。
月齢が高くなってくると型はめや積み木などのおもちゃで遊ぶこともできるようになってきます。
クラス全体で行う室内遊びでは、マットやクッションを使って体を動かす遊びや米粉や小麦粉粘土を使った感触遊びなどがおすすめです。
他にも風船遊びや新聞紙遊び、シール貼りなども楽しめるでしょう。
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ふれあい遊び
0歳児クラスでは保育士と十分にスキンシップをとれるふれあい遊びを積極的に取り入れていきましょう。
代表的なふれあい遊びとしては「いっぽんばし」「らららぞうきん」「きゅうりができた」などがあります。
他には簡単な童謡を歌いながら体をさすったりするだけでも心地よいスキンシップになります。
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製作アイデア
0歳児クラスでも季節やイベントに合わせて製作を行います。
手形や足形を使った製作は保育士がサポートすることで月齢の低い子どもも行えるのでおすすめです。
指先が使えるようになってきたら指スタンプやシール貼り、スプーンを持てるようになったらマーカーやクレヨンでお絵描きもできるようになります。
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人気の絵本
まだ自分では話すことができない0歳児ですが、絵本を読んでもらうことは大好きです。
保育士が優しい声で繰り返し読み聞かせることで楽しい時間を味わえると共に、言葉への興味を引き出し今後の発語にも繋がっていくでしょう。
0歳児の読み聞かせには、色や形がはっきりしていて擬音語や擬態語が使われたリズム感の良い絵本がおすすめです。
0歳児に人気の絵本のタイトルを紹介します。
- 『じゃあじゃあびりびり』
- 『がたんごとんがたんごとん』
- 『いないいないばあ』
- 『もこもこもこ』
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友達との関わり
0歳児は友達よりも、まずは両親や保育士など特定の大人と深い愛着関係を築くことが大切です。
乳児期に身近な大人が自分のことを受け入れてくれる安心感を持てることで、本格的に友達との関わりが出てくる3歳以降の社会性に繋がっていきます。
ただ保育園では同年代の子どもと一緒に過ごしているので、月齢が高くなるにつれ少しずつクラスの友達に興味を持つようになっていくでしょう。
しかしまだ一緒に遊ぶことは難しいので、おもちゃを取ってしまったり、興味のままに友達に触れようとして叩いてしまったり反対に嚙まれたりといったトラブルが起きてしまいます。
保育士は「貸してね」と子どもの気持ちを代弁したり、友達に触れようとしたときは「よしよししてね」と声をかけるなど、友達との優しい関わり方を伝えていくようにしましょう。
保護者支援のポイント
0歳児クラスの保護者は初めて保育園へ子どもを預けるといった方が少なくありません。
不安な気持ちを抱えている方が多いので、日中の子どもの様子はなるべく詳しく伝えるようにし、「我が子は保育園できちんと見てもらえている」という安心感を持ってもらえるようにしましょう。
また0歳児は体調が変わりやすかったり、離乳食を園と家庭で協力して進めたりと保護者との密な連携が必要です。
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0歳児保育で大切にしたいこと
0歳児の発達目安や保育内容について紹介してきました。
では0歳児保育を行う上で気を付けたいポイントとは何でしょうか。
ここでは0歳児保育で大切にしたいことについて3点に分けて紹介します。
月齢差を考慮して安全な環境をつくる
0歳児クラスには一日中ねんねしている子どもからハイハイで動き回る子ども、一人で歩くことができる子どもまでいます。
朝寝の有無や離乳食の回数などそれぞれの生活リズムも違うので、全員が安心して快適に過ごせる環境を整えなければなりません。
外遊びをする場合も、まだ歩けない子どもはベビーカーや散歩車などを利用するなど工夫が必要です。
保育士同士がうまく連携をとって、安全な環境で安心して過ごせるよう保育を行っていきましょう。
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スキンシップを大切にして愛着関係を築く
0歳児は大人と十分に触れ合い、愛着関係を築くことが大切です。
例えば、忙しい中でもおむつ交換を流れ作業にせず、一人の保育士が最初から最後まで行うことでゆったり関わる時間を作ることができます。
遊びではふれあい遊びを積極的に取り入れてスキンシップの機会を増やしていきましょう。
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SIDSや窒息など事故に注意する
0歳児は手よりも口の感覚のほうが優れているので、手に取ったものの感触を確かめるために何でも口に入れてしまいます。
おもちゃの消毒はこまめに行い、小さな部品など窒息に繋がるものが手の届くところにないか保育室の安全点検を入念にしましょう。
また何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る、乳幼児突然死症候群(SIDS)にも注意が必要です。
SIDSが発生する原因は定かではありませんが、予防法としては以下の3点が挙げられます。
- あおむけに寝かせる
- 母乳で育てる
- たばこをやめる
保育園では「あおむけに寝かせる」ことを必ず守り、お昼寝中も常に子どもの様子を注意深く観察しておくことが必要です。
参考:https://www.google.com/url?q=https://www.blog.crn.or.jp/lab/09/01.html (保育預かり初期のストレスとSIDS危険因子の関係について)
0歳児保育のやりがい
0歳児クラスは言葉が通じないことや全てのお世話をしないといけないなど大変なことも多いですが、日々成長していくかわいい赤ちゃんと触れ合えることは大きなやりがいの一つです。
ここでは0歳児保育ならではのやりがいについて3点紹介します。
一人ひとりとじっくり関わることができる
0歳児クラスは保育士1人につき3人という保育園の中では一番手厚い対数になっています。
そのため一人ひとりにしっかり目を向け関わることができます。
関係ができてくると、担任の保育士だけに甘えてみたり笑顔を見せたりと信頼を寄せてくれるようになるでしょう。
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著しい成長を感じることができる
0歳児クラスでは子どもの初めての場面に立ち会える機会が多いでしょう。
初めてハイハイをした、一人で立ったなど初めてできたことを保護者と共有して喜び合えることは0歳児保育の魅力です。
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保護者に頼りにされる
0歳児クラスでは初めての育児、初めての仕事と育児の両立で不安になっている保護者も少なくありません。
保育士は保護者が安心して仕事復帰できるようにサポートしていくことが大切です。
離乳食や発達の悩みを聞いたり、時にはプロとしてアドバイスをしながら園と家庭で連携をとって子育てを支えていくことで、少しずつ信頼関係を築いていきましょう。
また近年は核家族の増加で身近に赤ちゃんがおらず、出産して初めて小さな子どもと接するという方も増えています。
保育士は0歳児への接し方や遊び方など保育の知識を保護者の方へ積極的に伝えていきましょう。
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優しいスキンシップと関わりで安心して過ごせる環境を
0歳児の成長には安心できる大人との関わりが重要です。
この成長の著しい時期に「自分は愛されている」と十分に感じられることは、これからの人生の確かな土台になっていくでしょう。
近年は保育園での0歳児保育の需要が高まっており、平日のほとんどの時間を保育園で過ごす子どもも増えています。
保育士は優しいスキンシップと愛情のこもった関わりで、安心できる環境を提供することが大切です。
また保護者の育児相談に乗ったり0歳児との接し方や遊び方を伝えるなど、家庭支援も積極的に行っていきましょう。