保育教諭とは?保育士との違いや資格取得の特例制度を詳しく解説

保育教諭とは?保育士との違いや資格取得の特例制度を詳しく解説

共働き世帯の増加や子育てニーズの多様化に対応すべく、幼稚園と保育園の機能を一体化させた認定こども園が近年増加しています。

認定こども園で働く先生は「保育教諭」と呼ばれ、保育士や幼稚園教諭の新しい働き方です。

保育教諭という言葉を聞いたことがあっても具体的にどんな仕事をするのか、保育士や幼稚園教諭とはどう違うのか詳しく知らない方も多いかもしれません。

この記事では、保育教諭とは何なのか、必要資格や仕事内容、年収やメリット、デメリットなどについて詳しく解説します。

保育教諭とは

保育教諭とは、幼保連携型認定こども園で働く先生のことです。

幼保連携型認定こども園は幼稚園と保育園両方の性質を併せ持った施設なので、勤務するには幼稚園教諭免許と保育士資格の両方が必要です。

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「保育教諭」という資格があるわけではなく、両方の資格を持っていて幼保連携型認定こども園で働いている先生が保育教諭と呼ばれます。

幼保連携認定こども園とは

保育教諭が働く「幼保連携型認定こども園」とは何ですか?

保育士

コンサルタント

幼保連携型認定こども園は、学校及び児童福祉施設の一つです。

認定こども園とは教育と保育を同時に行う施設で、幼稚園と保育園の良さを併せ持っています。

共働き世帯の増加や少子化の流れの中で、より各家庭のニーズに対応した保育を提供するために誕生しました。

認定こども園には、具体的に以下の機能があります。

  • 就学前の子どもを、保護者が働いている、いないにかかわらず受け入れて、教育と保育を一体的に行う機能
  • 子育て相談や親子の集いの場の提供等地域における子育ての支援を行う機能

認定こども園には幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地域裁量型の4種類があります。

類型 特徴
幼保連携型 幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能を併せ持つ単一の施設として、認定こども園の機能を果たすタイプ
幼稚園型 幼稚園が、保育を必要とする子どものための保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えて認定こども園の機能を果たすタイプ
保育所型 認可保育所が、保育を必要とする子ども 以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園の機能を果たすタイプ
地方裁量型 認可保育所以外の保育機能施設等が、保育 を必要とする子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園の機能を果たすタイプ

 

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幼保連携型の認定こども園が主流で、現在はこども園全体の約7割を占めています。

保育教諭になるには

今後さらに需要が高まっていくとされる保育教諭に興味を持っている方も多いでしょう。

しかし「保育士資格しかないから保育教諭にはなれないのでは?」「新たに資格を取り直すのは手間がかかりそう」と感じている方もいるかもしれません。

実は現在、資格取得の経過措置や特例制度が実施されているので保育教諭を目指すなら今が絶好のタイミングです。

ここでは保育教諭になるための方法や資格について紹介します。

必要資格と経過措置

保育教諭になるには、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方が必要です。

しかし現在は幼稚園や保育園から認定こども園への移行と保育人材の確保をスムーズに行うため、幼稚園教諭免許と保育士資格どちらかの資格があれば保育教諭として働くことができる経過措置が取られています。

期間は令和6年度末までなので、保育教諭に挑戦するには今がチャンスです。

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勤務しながらもう片方の資格を取得すれば、令和6年度以降も保育教諭として働くことができます。
参考:https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h310218/pdf/2_s9-1.pdf#page=2(幼稚園教諭免許状・保育士資格の併有促進のための支援策について)

資格取得の特例

必要資格の経過措置だけでなく、資格取得の特例も設けられています。

特例制度は幼稚園教諭と保育士どちらか片方の資格を持っており、以下の施設で3年かつ4320時間以上の勤務経験がある方であれば誰でも利用できます。

  •  認定こども園(幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型)
  •  幼稚園(特別支援学校の幼稚部含む)、保育所
  • 「認可外指導監督基準」を満たす認可外保育施設(一部対象外)、へき地保育所
  •  幼稚園が設置する認可外保育施設 、公立の保育施設

特例によって普通のルートよりも手軽に資格取得が可能になりました。

ここでは保育士資格のみを持っている方、幼稚園教諭免許のみを持っている方それぞれの資格取得特例について紹介します。

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この特例も令和6年度末までなので、保育教諭を目指す方は早めにチャレンジしましょう。

保育士が幼稚園教諭資格を取得する方法

保育士資格を持ち、上記の施設で3年かつ4320時間以上の勤務経験があれば、大学で以下の5科目8単位を修得することで、幼稚園教諭免許を取得できます。

  • 教職の意義及び教員の役割、教員の職務内容 (2単位)
  • 教育に関する社会的、制度的又は経営的事項 (2単位)
  • 教育課程の意義及び編成の方法 (1単位)
  • 保育内容の指導法、教育の方法及び技術 (2単位)
  • 幼児理解の理論及び方法 (1単位)

大卒の場合は1種、短期大学士・専門学校卒等の場合は2種の免許が授与されます。

通常、1種の場合は59単位、2種の場合は39単位の修得が必要なので大幅に時間が短縮できます。

幼稚園教諭が保育士資格を取得する方法

幼稚園教諭免許を持ち、上記の施設で3年かつ4320時間以上の勤務経験があれば、大学等(指定保育士養成施設)で以下の4科目8単位を修得することで保育士試験の全科目が免除になります。

  • 福祉と養護 (2単位)
  • 相談支援 (2単位)
  • 保健と食と栄養 (2単位)
  • 乳児保育(2単位)

通常、幼稚園教諭免許を持っている方が保育士資格を新たに取得するには34単位の修得が必要なので、こちらも取得にかかる時間の大幅な節約になります。

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単位修得のための受講方法は通学制や通信制があるので、自分に合った方法を選ぶことができます。

保育教諭と保育士・幼稚園教諭はどう違う?

保育教諭の定義や資格取得の特例などについて紹介してきました。

では実際に保育教諭の仕事内容はどんな感じなのでしょうか。

保育士や幼稚園教諭との違いも気になることでしょう。

ここでは保育教諭の仕事内容に加え、年収や役職など働き方について紹介します。

仕事内容

保育教諭は0〜5歳児を対象に教育と保育を行います。

幼保連携型認定こども園では同じ年齢でも認定によって保育時間が変わってくることが、保育園や幼稚園との大きな違いです。

  • 1号認定:3~5歳児で保育を必要としない
  • 2号認定:3~5歳児で保育を必要とする
  • 3号認定:0~2歳児で保育を必要とする

1号認定の子どもはほぼ幼稚園と同じようなスケジュールで過ごすので、保育時間は基本的に9時から14時ごろまでです。

2号認定と3号認定の子どもは、保護者の就業時間に合わせて早朝保育や夕方の預かり保育があります。

保育内容は園によっても違ってきますが、基本的に0〜2歳児クラスは子どもの生活面や身辺自立の援助などの保育が中心で、3〜5歳児クラスは年齢や発達に合わせた教育が中心です。

3〜5歳児は認定の種類に関わらず一緒に過ごすので、メインの活動は全員が揃う午前中に行います。

行事やイベントの企画遂行、保護者対応などについては、幼稚園や保育園の業務と重なる面も多々あるでしょう。

勤務形態は?
保育時間に幅があるので、保育教諭の勤務時間は基本的にシフト制です。

年収

保育教諭の平均年収はいくらなのでしょうか。

保育士、幼稚園教諭の平均年収と共に表にまとめてみました。

職種 私立 公立
保育教諭 3,359,448円(8.2年) 3,446,172円(9.9年)
保育士 3,621,876円(11.2年) 3,637,356円(11.0年)
幼稚園教諭 3,449,904円(7.8年) 4,540,272円(11.1年)

※常勤のみ。年収は給与月額×12で算出。
※()内は平均勤続年数

保育教諭の年収は公立と私立でそれほど大きな差はなく、約340万円です。

平均勤続年数の違いもありますが、保育教諭の年収が保育士や幼稚園教諭より圧倒的に高くなるということはなさそうです

ただ、あくまでこれは平均値なので、それぞれの園によって給与額は異なります。

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就職先を選ぶときには平均年収もぜひ参考にしてみてください。
参考:https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/data/pdf/chousa/kekka.pdf#page=8 (令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】)

役職

保育教諭として働き続けた場合のキャリアアップの道筋を紹介します。

保育教諭の役職は一般的に、上から園長、副園長、教頭、主幹保育教諭、指導保育教諭、保育教諭と続きます。

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役職がつくことで給料upが見込めますし、転職することになった場合にはキャリアのアピールポイントにもなります。

ここではあまり聞きなれない「主幹保育教諭」と「指導保育教諭」について紹介します。

主幹保育教諭とは

主幹保育教諭が担う業務は主に以下の3点です。

  • 園長や副園長など上司のサポート
  • 上司の命を受けて園務の一部の整理
  • 園児の教育と保育

保育教諭としての業務だけでなく、園全体のマネジメントにも関わる総合的な役職です。

指導保育教諭とは

指導保育教諭が担う業務は主に以下の2点です。

  • 園児の教育と保育
  • 保育教諭その他職員に対する教育や指導、助言

指導保育教諭はその名の通り、他の職員に対する指導を行う役職です。

参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000077 (就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 第十四条)

保育教諭のメリットややりがい

保育教諭の仕事内容や働き方について紹介してきました。

保育士や幼稚園教諭ではなく保育教諭になろうか迷っている方にとっては、実際に保育教諭として働く場合のメリットやデメリットについても気になることでしょう。

ここからは保育教諭として働くメリットややりがい、反対に保育教諭ならではのデメリットについて見ていきます。

保育と幼児教育両方のスキルが身につく

保育教諭は、主に0〜2歳児クラスでは生活面の援助を中心に保育をし、3〜5歳児クラスでは教育面に力を入れた保育を行います。

幼保連携型認定こども園は保育園と幼稚園両方の機能を取り入れた施設なので、そこで働く保育教諭は保育と幼児教育の高いスキルが得られるでしょう。

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保育園や幼稚園どちらか一方で働くだけでは気づけなかったような広い視野で保育を行えるようになるかもしれません。

幅広い年齢の子どもと関わることができる

保育教諭は0〜5歳児の保育・教育を行うので、幅広い年齢の子どもと関わることができます。

赤ちゃんの頃から見ていた子どもが立派に卒園していく姿を見られることはこの仕事の大きなやりがいです。

保育園も0〜5歳児が通いますが、保育園の場合は3歳児クラスに進級するときに幼児教育を目的に幼稚園へ転園する子どももいます。

その点認定こども園では幼児教育にも力を入れているので、乳幼児期の育ちを一貫して支えることが可能です。

様々な経験を積めるので転職の際に有利になるかも

転職を考えたときに、保育と幼児教育両方のスキルを持っている保育教諭は就職先の選択肢が増えるでしょう。

今後も幼保一元化の流れが続くので、保育教諭の経験は面接でのアピールポイントになり、転職活動で有利になる可能性もあります。

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保育と幼児教育両方に携わることで保育の技術や知識が高まり、保育者としての自信にも繋がりますね。

保育教諭のデメリット

保育教諭ならではのメリットについて見てきました。

ここからは反対に、保育教諭として働くデメリットについて紹介します。

片方の資格しかない場合、新たに資格取得が必要

どちらか一方の資格しか持ってない方は新たに資格を取得しないといけないというデメリットがあります。

しかし現在は資格取得の特例が設けられているので、条件を満たしていれば令和6年度末までは通常より短いルートで持っていない方の資格取得が可能です。

コンサルタント

保育教諭として働き続けたいと考えている方は今のうちに資格取得することをおすすめします。

保育士と幼稚園教諭で考え方が違うことも

保育士と幼稚園教諭はどちらも就学前の子どもの育ちを支える仕事ですが、国の管轄が違うこともあり今までは別々に保育・教育を行ってきました。

そのため元保育士の保育教諭と元幼稚園教諭の保育教諭では考え方ややり方が異なることがあるかもしれません。

反対に新しいやり方や考えに気づくことができたり、保育の視野を広げることもできるでしょう。

コンサルタント

認定こども園での保育をより良いものにするという共通目的を持って働くことが大切ですね。

子どもによって降園時間が違うので注意

幼保連携型認定認定こども園では、保護者の就労状況など認定によって降園時間がバラバラです。

そのためお昼寝や午後のおやつの有無など、午後からのスケジュールが子どもによって異なります。

保育教諭は毎日必ず子ども一人ひとりの降園時間を確認し、間違いのないようにしないといけません。

コンサルタント

3〜5歳児クラスのメインの活動は午前中に行うなどの工夫も必要です。

保育教諭の求人は増加中

認定こども園は平成23年には全国に762園しかありませんでしたが、平成31年には7208園まで増加しました。

8年間で約10倍になっており、今後も幼保一元化の流れは続いていくのでさらに増加する見込みです。

園の数が増えるにつれ、保育教諭の求人も年々増加しています。

保育者としてスキルアップしたい方、今後も長く保育の仕事を続けていきたい方は保育教諭への転職がおすすめです。

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保育教諭のニーズは今後も高まる見込み!

保育教諭の定義や必要資格、仕事内容や働き方について紹介してきました。

現在就学前教育の一体化や子育て支援の充実・効率化を目指し、保育園と幼稚園の一元化が図られています。

保育と教育の両方を担う保育教諭はこれからの時代に欠かせない存在です。

保育教諭になるには保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要ですが、現在は特例制度が設けられているので、条件を満たしていれば通常より手軽に資格取得が可能です。

ぜひこの機会に保育士と幼稚園教諭の要素を併せ持った保育のスペシャリスト、保育教諭を目指してみませんか。